高齢者住宅の正しい判断
詳述しないが、原因が大企業の労働者いじめ・中小企業いじめを土台とした集中豪雨的な輸出ラッシュにあることは明白で、S名誉会長なども認めざるをえないところである。
第2に、「報告」は「雇用の維持」が最重要課題というが、いまや大企業は円高であるかどうかにかかわりなく、構造改革などの「21世紀戦略」をかかげ、その実現のために(いわば手段として)リストラ・規制緩和を強行し、これがいま失業・雇用問題を深刻にしているにもかかわらず、きれいに隠蔽されている。
例年のことながら日経連は、右のように一雇用が重要と主張しつつ、賃金も一雇用も抑えつけることをねらっているが、それだけでは労働者の反発が予想されるので、高い物価を下げることで実質賃金を上げよう、とそれ自体当然の提言をしている。
すなわち、「勤労者の生活水準の実質的な向上は、内外価格差の解消による物価水準の是正によって実現すべきである」と述べている。
しかし、そこにもウラがあり、高物価の原因を一つは農業・中小企業・公務部門などの低生産性にすりかえている。
いま一つは高賃金に求め、賃金と物価の悪循環論を蒸し返している。
これを「報告」で確認すれば、「高物価水準は、国内産業間の生産性格差と賃金・物価の悪循環によってもたらされている」「わが国では、総じて高生産性部門の物価は低く、低生産性部門の物価は高が、生産性上昇を超えた低生産性部門の賃上げが価格に転嫁され、全体的に高物価水準を招いている。
このような「論理」は1985年の「プラザ合意」後の円高以来10年ほど変わっていない。
日経連は経文を読むがごとく繰り返し同じことを主張し続け、その浸透・世論化をねらっているのだ。
「生産性基準原理」の手直しがおこなわれるのではないか、という観測がマスコミなどでこのような「認識」を下敷きにして、次のように賃金抑制と規制緩和の必要が強調されている。
すなわち、「国際的にみて高い物価と賃金を見直す必要があるわけで、賃金と物価の悪循環を断ち切る合理的な賃金決定と、非効率部門の生産性向上を妨げている保護・規制の撤廃を急がなければならない」と。
94年の秋ごろから流れた。
しかし96年版の「報告」では、次のとおり「原理」の「徹底」を強調している。
「日経連は、賃金決定の基本原則として、国民経済のマクロレベルでは生産性基準原理を、個別企業のミクロレベルでは支払能力を重視すべきことを提唱してきたが、96年の賃金決定に際してもこの考え方の徹底が望まれる」。
マクロ(国民経済レベル)でベア・ゼロをいうための「論拠」として、「生産性基準原理」がまだ利用価値をもっているこう日経連は判断しているのだろう。
もし今後物価の大幅下落が起こり「実質国民経済生産性」が目立って高まるような事態にでもなれば、賃上げの根拠となるので、日経連にとって「生産性基準原理」は邪魔物となる。
そうならないかぎり利用し続ける、というのが「N会長)日経連」の魂胆ではないのか。
事実、96春闘に向けても、「ここ数年来、実質国民経済生産性について、その伸びがほとんど見込めないなかでは、マクロの国民経済全体の観点からすれば、賃上げは不可能である」という論法で、日経連は「生産性基準原理」を活用しているのである9以上のように賃金を、まずマクロで「生産性基準原理」によって抑え込み、次にミクロ(企業レベル)では「支払能力」で抑え込む、という2重の装置が用意されている。
この2つのうち日経連がとくに重視しているのが、後者の「支払能力」論である。
それは後述の「横並び春闘」破壊(春闘つぶし)のためにも日経連としては不可欠な装置である。
また、「生産性基準原理」が前述の理由で邪魔になっても、最終的には企業レベルで「支払能力」論で抑え込むという心づもりなので、それは賃金抑制の奥の手(ないし切り札)の位置を与えられている。
この「支払能力」論がいかに欺隔的か、次のことからも明白である。
まず、その定義(めいたもの)を「報告」でみると、「個別企業レベルの賃金決定の基本となる支払能力論は、自社の成長と体質強化をめざす経営計画に基づいて、中長期的視野に立った計画的な賃金決定を意図するものである」という。
みられるとおり、中長期的な「経営計画」にもとづく「支払能力」論だから、いま支払能力があっても、将来の「経営計画」を口実に支払能力なしといえる(つまりどうにでもいえる)「理論」が「支払能力」論なのだ。
らっきょうの皮むきよろしく、「支払能力」論にはタネ(根拠)が全然ないのである。
まだその先がある。
そのようにきびしい日経連流の解釈による「支払能力」があるとされた場合でも、ベースアップにはなかなか結びつかない、ということだ。
つまり、「今日の経済・経営状況下では、支払能力に余力があれば、まず雇用の維持を最優先し、その次に賞与・一時金に生産性向上の成果を振り向けることが望まれる」からである。
「支払能力」があっても、「雇用の維持」や「賞与や一時金」のほうに振り向けろ、という主張なのである。
以上とは別に、「報告」の強調する「総額人件費管理」なるものに厳重に注意すべきである。
つまり、「忘れてならないのは、賃金決定に際しては、賞与・退職金・社会保障関連負担・労働時間などを含めて、総額人件費管理の視点から総合的な考慮をする必要がある」というわけで、いわゆる「所定内賃金」だけが抑制の対象になっているのではなく、福利厚生費も含めて人件費の総体が抑制の対象としてねらわれている、ということだ。
そこに「労働時間」が含まれているのが一見奇妙だが、裁量労働など「みなし労働時間制」を利用・悪用して時間外手当をカットしようとねらっているのだから、奇妙でもなんでもない。
日経連(資本)の貧欲ぶりを改めて思い知らされるばかりである。
労働時間といえば、次のとおり96年版の「報告」は、ワークシェアリングに言及している。
「雇用を守るという観点からは大企業、中小企業にかかわらず、緊急避難的な手段として、ワークシェアリング(雇用の維持のために行なう削減時間分に応じた賃金の削減)の検討も念頭におくべきであるこれをどうみるか。
みられるとおり、「検討も念頭におくべきであろう」ときわめて慎重な表現になっている。
筆者の推測では、94年秋ごろ日経連は、ドイツの「賃下げつきワークシェアリング」に関心を示し、その検討を続けたが、いまでは「わざわざ時短をしなくても賃下げの手口はいろいろある、ワークシェアリングよりも有効な方法がほかにある、だから慎重に」ということではないのか。
最後に、日経連の「春闘つぶし」の内容・ねらいをきちんとみておこう。
まず、当時の連合の有力単産からも提起されている隔年春闘論についてである。
「報告」は、「いわゆる春闘見直しの中で、賃金決定について隔年交渉への移行が論議されているが、その是非については個別労使の慎重な検討に委ねられざるをえない」と指導力不足ともみえる態度をとりつつも、次のとおり本音を披渥している。
つまり、「もちろん意思疎通のための労使の毎年の話し合いは重要である。
いずれにせよ、自社の経営動向とその前提となる経済・経営環境について労使の十分な論議が望まれる」と。
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